大和総研 主席研究員 /鈴木 裕
近年、ESGをうたう投資商品が増えているが、商品に良いイメージを植え付ける目的でESGの用語が乱用されていないだろうか。投資によって、低炭素社会の実現に貢献する、女性活躍を推進する企業を応援するなど、聞こえの良い説明は、商品の真実を描いていないのではないかという疑いが世界中で湧き上がっている。こうしたなか、米国証券取引委員会(SEC)が、ESG投資商品に関する情報開示の規則を設ける動きを見せており、わが国でも増え続けるESG投資商品の開示の在り方が見直されようとしている。しかし、こうした規則案が実効的に機能し得るのか、そもそも必要なものであるのかという点で懐疑の念を抱かざるを得ない。
すずき ゆたか
一橋大学法学部卒。大和証券に入社し、大和総研、米国ロチェスター大学MBA。年金基金、アクティビストファンドなどの株主行動や国内・海外のコーポレートガバナンス改革の動向についての調査研究に従事。機関投資家と上場企業との間のコミュニケーションを支援する業務も行う。
掲載号 /週刊金融財政事情 2022年8月9日号