解説

経済安全保障によるサプライチェーン国内回帰の副作用

自由貿易体制に基づく重要品目の生産地多様化を

学習院大学 経済学部 教授 /椋 寛

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新型コロナウイルスの感染拡大や米中デカップリング(分断)は、重要品目の供給を特定の国に過度に依存する地政学的なリスクを顕在化させた。しかし、経済安全保障の観点から各国が貿易障壁を引き上げ、国内生産へ回帰することは、「効率的な国際分業が各国に利益をもたらす」という国際経済学の基本原則に反している。生産補助金などの産業政策による国内回帰の推進や、保護主義的な貿易政策による国内産業保護はサプライチェーン強靭化につながるとは限らない。むしろ、各国の貿易制限措置は政策の不確実性を高め、さまざまな副作用を生む恐れがある。

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むくのき ひろし
97年横浜国立大学経済学部卒、99年東京大学大学院経済学修士取得、06年同博士取得。02~03年日本学術振興会特別研究員、08~10年ブリティッシュ・コロンビア大学客員准教授を経て11年から現職。専門は国際貿易論。主著に『自由貿易はなぜ必要なのか』(有斐閣、20年)。