政府が掲げる「スタートアップ育成5か年計画」の下、未上場株式市場の活性化に向けた制度改革が本格的に動き出した。金融庁と日本証券業協会が9月に公表した「『スタートアップ企業等への成長資金供給等に関する懇談会』報告書」では、大規模投資家による資金供給の拡大、セカンダリー(2次流通)取引の活性化、投資家層の多様化など、包括的な施策が示されている。
一方、2020年から21年にかけて起きたスタートアップバブルの崩壊の影響で、未上場企業の資金調達環境は芳しくない。日米間の未上場企業の資金調達規模は約40倍の格差があり、この差は縮まる気配がない。
こうしたなか、前向きな姿勢も見られる。今年5月に施行された改正金融商品取引法に基づき、新興企業2社がセカンダリー市場における未上場株式の売買仲介業務を開始予定だ。証券会社もプロ投資家や富裕層向けに未上場株式を流通させる体制を整える。未上場株式を組み入れた投資信託を取り扱う運用会社も増えてきた。
未上場企業が日本経済の新たな成長エンジンとなるには、制度改革の着実な実行と市場参加者の意識改革が欠かせない。未上場企業の資金調達を取り巻く環境を概観し、今後の展望を占う。