野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト /木内 登英
野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト /木内 登英
投稿日2022.03.04. /週刊金融財政事情 2022年3月8日号
ロシアのウクライナ侵攻を受け、先進国が段階的に経済制裁を強化している。ロシア経済が受ける打撃は段階的に高まるが、同時に、制裁をかける先進国側でも原油・天然ガスの調達に支障が生じ、またエネルギー価格の上昇等によって経済活動が阻害される。欧米は、国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの一部銀行の排除を決めたが、対象をすべての銀行に広げ、また主要各国がロシアの銀行のコレルス業務を停止すれば、制裁の効果は最大限に高まる。その場合、ロシアでは通貨危機が生じ、貿易は3分の1まで縮小する可能性がある。ただし、中国がロシアの貿易を支援する場合には、制裁効果が減じられる可能性がある点にも留意したい。
きうち たかひで
早稲田大学政治経済学部卒業。87年野村総合研究所入社。90年同研究所ドイツ、96年同研究所米国にそれぞれ勤務。07年野村証券金融経済研究所、経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年日本銀行の政策委員会審議委員に就任し、金融政策その他の業務を5年間担った。17年7月から現職。最新著書に『決定版 デジタル人民元』。
掲載号 /週刊金融財政事情 2022年3月8日号