第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト /熊野 英生
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金融政策のセオリーでは、金融緩和のときはサプライズを演出し、金融引き締めのときは事前に期待を織り込ませるとされる。しかし、日本銀行は現時点で、マイナス金利解除のタイミングを織り込ませることはしていない。毎回の記者会見では、安定的に2%を上回る確度が高まっているとし、目標達成への接近を伝えてはいるが、タイミングそのものへの言及はない。この点はセオリーと異なっている。
植田総裁といえば、1998年からの審議委員時代に時間軸効果の概念を生み出したことで有名である。その植田総裁が、なぜ今のタイミングで時間軸効果を使わずに、曖昧な説明に終始しているのか。本稿では、まだ植田総裁の頭の中にしまい込まれている政策運営の時間軸のイメージを大胆に考えたい。
くまの ひでお
90年横浜国立大学経済学部卒、日本銀行入行。00年第一生命経済研究所入社。11年から現職。専門は金融政策、財政政策、為替・長短金利、経済統計。
掲載号 /週刊金融財政事情