第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト /熊野 英生
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植田日銀が始動した。しかし、多くの人の思惑とは異なり政策修正をすぐには行いそうにない。さらに気になるのは、植田和男総裁に玉虫色の発言が多いことだ。金利正常化を目指すと言っておきながら、物価見通しについて「不確実性が極めて高い」と述べている。植田日銀は、政府との共同声明を引き継ぎ「できるだけ早期に」物価安定の目標である2%達成を約束していたはずだが、それとは裏腹に「できるだけ早期に」判断を下そうとしていないように見える。以前は、2023年4~6月のどこかのタイミングでYCC撤廃を含めた大胆な政策修正に動くとの見方が多かったが、冷静に植田総裁の言葉を1つひとつ拾っていくと、もはやそれもありそうにない。金利正常化=マイナス金利解除に至ってはかなり先の話となりそうだ。
くまの ひでお
90年横浜国立大学経済学部卒、日本銀行入行。00年第一生命経済研究所入社。11年から現職。専門は金融政策、財政政策、為替・長短金利、経済統計。
掲載号 /週刊金融財政事情