解説

粉飾決算の増加が示す金融機関における与信管理の課題

取引仕訳を推考しない財務分析の弱点が資金繰り管理の後退とともに顕在化

プロモントリー・フィナンシャル・ジャパン シニア・プリンシパル /足澤 聡

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民間調査機関によると、2019年の企業倒産は件数ベースで前年を上回ったばかりか、粉飾決算に起因する倒産の急増という新たな懸念材料が浮上した。全国地方銀行協会の笹島律夫会長(当時、常陽銀行頭取)も昨年11月の会長会見で、融資先の粉飾決算が与信費用増加の一因になっていると警鐘を鳴らした。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う資金繰り支援の効果もあってか、粉飾決算問題はいったん終息したかに見える。しかし、粉飾決算が急増した理由については明らかになっておらず、早晩再燃する可能性が高い。また、粉飾の特徴や手口について、従来とは異なる傾向が認められることにも留意が必要だ。筆者は数年前から、融資先企業の粉飾決算がいずれ問題化する可能性があると訴えてきた。本稿では粉飾決算増加等の背景について、金融機関における与信管理上の課題に焦点を当てて考察する。

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あしざわ さとし
東北大学経済学部卒。北海道拓殖銀行勤務後、00年4月財務省関東財務局に入局。金融庁検査局への出向を含め、一貫して金融検査に携わり、特別金融証券検査官として、地方銀行、大規模信金の金融検査の指揮を務める。金融庁出向時は信用リスク教育担当として検査官の指導育成に当たる。15年4月からプロモントリー・フィナンシャル・ジャパンにて勤務。