小沢・秋山法律事務所 弁護士 /香月 裕爾
今回から2回にわたり、時効障害の改正点を解説する。時効障害とは、時効の完成の障害となる事由をいう。この時効障害の根拠としては、(i)債権者が権利行使の意思を明確にしたこと、(ii)債権の存在が確実であること――に求められる。 現行法では、「中断」と「停止」が時効障害として規定されている。「中断」では、進行を開始した時効期間がリセットされ、中断事由終了後、新たな時効が開始する。一方、「停止」は、文字どおり一定の事由があると時効の進行が一時的に停止する。 改正法は、「中断」を「更新」に、「停止」を「完成猶予」に置き換えた。前者については、現行法の「中断」の概念に適合する言葉が「更新」だからという理由であり、前記(ii)に対応するものである。後者の「完成猶予」は、債権の存在について確証が得られたわけではないが、とりあえず債権者が一定の行動をとったことによって、権利行使の意思を明確にした場合に認められる。前記(i)に対応するものである。
掲載号 /週刊金融財政事情 2017年10月2日号