特集どうなるの?財政再建

十分な正当性と有用性がある「内部留保課税制度」

制度創設にあたっては、課税対象範囲に関する合理的な判断基準が重要に

神奈川大学 法学部 教授 /葭田 英人

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10月の衆院選において話題を呼んだ内部留保課税制度の導入に対しては、二重課税にあたるとして経済界から批判の声が多い。本来、内部留保の使い道は企業自身が決めることであって、国や政府が介入すべきではない。しかし、企業利益が設備投資や雇用、賃上げに向けられることなく過度に内部留保されたのでは、企業の活性化や日本経済の発展につながるものではない。少なくとも内部留保課税には、経済の好循環を実現する手法として、成長戦略のさらなる強化と財政再建に向けた道筋としての役割・意義がある。米国の留保金課税制度を参考にして、目的のない内部留保による租税回避を防ぎ、個々の事情を考慮し、公平性を担保した合理的な判断基準について再検討する必要がある。

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よしだ ひでと
52年石川県生まれ。筑波大学大学院修了。専門は会社法・税法・信託法、事業承継法制。近著に『基本がわかる会社法』『信託の法制度と税制』『会社法入門(第五版) 』など。