特集極東 地経学リスクの脅威

通貨危機を経てアジア諸国が直面する金融リスクの実相

目立った金融脆弱性はないものの、中国が最大の懸念材料

東京女子大学 現代教養学部 特任教授 /荒巻 健二

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世界経済は、5月初め以降の米中貿易摩擦の激化などから下方リスクが強まり、米国経済の先行きにも黄信号がともりかねない状況だ。金融市場を見ても2018年初来、主要株式市場は何度か大幅下落に見舞われた。為替市場でも昨年1年間でアルゼンチン・ペソが対ドルで▲50.6%、トルコ・リラが▲28.3%の暴落となり、アジア通貨でもインドネシア・ルピアのように比較的下落が大きいものもある。本稿では、アジア通貨危機の経験を振り返ったうえで、現時点のアジア諸国の対外的金融脆弱性について分析・評価する。

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あらまき けんじ
74年一橋大学社会学部、76年同法学部卒業、同年大蔵省入省、87年IMF財政局エコノミスト、96年大蔵省国際金融局開発金融課長、01年経済学博士(京都大学)、04年東京大学大学院総合文化研究科教授、14年ロンドン大学客員教授。東京大学名誉教授。17年から現職。主要著書に『金融グローバル化のリスク』(18年、日本経済新聞出版社)、『日本経済長期低迷の構造』(19年、東京大学出版会)。