解説

JAグループに見る補填金依存型事業モデルの限界

農林中央金庫への負荷緩和が喫緊の検討課題に

S&Pグローバル・レーティング シニア・ディレクター /吉澤 亮二

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農林中央金庫が、その銀行事業(注1)の収益により傘下の農業協同組合を補完する、現行の補填金供給型のグループ事業モデルは、国際的な利回り曲線の低下や平たん化を背景に、限界を迎えつつある。グループ全体の固定費を削減しない限り、グループが農林中央金庫に対して期待する実質的な補填金(注2)は固定的である一方、補填金の原資となる同金庫の銀行事業による市場運用収益は、現在の市場環境下では中長期的に低下傾向にあり、資金運用で固定的な期待補填金を賄えなくなってきたからだ。今後、農林中央金庫は、期待補填金を賄うためにリスク選好度を引き上げるか、同補填金を減額することでグループ全体の費用構造の改革を促すかという選択を迫られることになるだろう。

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よしざわ りょうじ
87年横浜国立大学経営学部卒。92年ボストン大学経営大学院(MBA)修了。西ドイツ銀行審査部などを経て、01年S&P入社。日本および世界の金融機関全般の信用力分析に従事する。著書に『銀行不要時代』(毎日新聞出版)。