解説

「新しい資本主義」を掲げた岸田政権の経済政策の限界

ポスト岸田に問われる「収奪的社会」回避の可能性

BNPパリバ証券 経済調査本部長 チーフエコノミスト /河野 龍太郎

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過去四半世紀を振り返ると、企業の生産性は3割向上したものの、労働者の実質賃金は横ばいのままだった。実質賃金が上がらないため、個人消費は低迷し、企業の売上げが増えずに国内投資の採算は取れていない。「新しい資本主義」を掲げた岸田文雄政権は当初、分配機能の強化を打ち出したことで、ゆがんだ富の分配の是正という問題の核心ともいえる領域に踏み込むと思われた。しかし、その後は「生産性の引き上げが先決」との考えに改めたように見える。ポスト岸田も生産性の向上を優先する考えに固執し過ぎると、日本経済は長期停滞から抜け出せなくなり、「収奪的社会」の色合いが強まるに違いない。

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こうの りゅうたろう
住友銀行、大和投資顧問、第一生命経済研究所を経て00年から現職。東京大学先端科学技術研究センター客員上級研究員。近著に『成長の臨界』『グローバルインフレーションの深層』(共に慶應義塾大学出版会)。